2007-05-01
天気がよかったので、大山に行ってきた。
大山は大山阿夫利神社を拝する古くからの霊山で、大山阿夫利神社はお酒の神様を奉ってあり、水がおいしいことでも知られている。
独楽と豆腐も名物で、山頂へ行くケーブルカーの駅までの参道では、大山名物の独楽や、地元の特産品やお土産のほかに、豆腐を食べる食堂などが多く軒を並べている。
家を出発したのが遅かったので、大山阿夫利神社の下社まで行ってお参りし、ケーブルカーの下りの最終に乗って山を降りた。お楽しみの豆腐は帰りに食べようと思っていたのだが、ケーブルカーの最終時間になると、お店はどこも閉める準備をはじめてしまう。くいっぱぐれるのを危惧し、参道途中にある豆腐会席を楽しめる旅館で、ちょっと早い夕食をとることにした。
広間に通されると、そこには1組の家族連れと1組の50代くらいの夫婦らしい二人連れがこれから食事をとるところだったが、私たちが注文する頃には、夫婦らしい二人連れだけになっていた。
男性は豆腐が嫌いらしく、「豆腐は味がしない」などとでかい声で色々言っていて、豆腐を楽しみにしてこれから食事をしようとしているのに、なんて配慮のない男なのだと最初は思ったのだ。
そのうち、男性の方が相対性理論について論じ始めた。女性の方は物理的な知識はあまりないようだが、その話を適当に興味がある風に話を合わせている。男性の話はどんどんと熱をおびてきて、広間中に響くような大きな声で相対性理論とはなんぞやという話をしている。会席料理なので料理が次々と運ばれてくるが、そんなことはお構いなしに図を書きながら説明をしている。
相対性理論の話を始める前までは、その二人連れが夫婦なのかどうなのか怪しい内容で、「六本木あたりの○○ちゃんには、俺はもてた」とか、引き上げ湯葉の豆乳が薄くてなかなか湯葉ができない(そんなことは決してなく、濃厚な味の良い豆乳だった)などというような話をしていたのだ。それなのに、唐突になんの脈絡もなく「それじゃあ、相対性理論の話でもしようか」と前置きまでして話は始まった。
その男性は、私たちが食事をはじめてから終るまでの45分の間、30分は相対性理論について語っていた。彼らは私たちよりも先に食事を始めたはずなのに、私たちが席を立つ頃には相対性理論の話は一段落ついたのか、冷めてしまった煮物を男性が口にしていて、「そろそろ帰ろうか」などと言っていた。
大山は豆腐が有名であるので、大山で食事をしようとすると豆腐がらみのメニューになる。特に食事をした旅館は、豆腐会席しかメニューになく、他のメニューは予約制になっているので、入口のメニューには豆腐会席しか書かれていない。
豆腐が嫌いなのに、なぜそのようなところに入って豆腐料理に文句をいっていたのかというのも謎だが、豆腐を食べながらなぜ相対性理論についてとうとうと語らなければならないのかも不明である。
会話の内容も妙で、果たしてあの二人は夫婦なのか。それにしては、会話の内容が女性の方がわざわざ「旦那と結婚して私は幸せだったのよね」などと言ったりして、別に旦那と思える男性がいるかのようでもある。
不倫の食事の内容にしては、食事のときに図解してまで相対性理論…。
強制的にそれらの会話を聞かされている私たちの意識も、アンドロメダまでぶっとびそうなくらい理解不能だった。
その二人連れに先立って、人のいなくなった参道を降り、車のいなくなった駐車場に行くと、ピンクのエプロンをしたつっかけのおばさんと、サンダル履きのおじさん、中学生くらいの娘さんが三人で駐車場の内側のはしっこをくまなくぐるぐる歩いていた。
三人は夕餉の団欒でもしているかのように、明るく会話をしながら、娘さんはお父さんの肩に手をかけ、半分もたれかかるようにして歩いている。
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