◇再考 Who's Next - The Who
2013-09-17


ロックのアルバムとしては秀悦に楽曲が揃っているし、悪くはないと今は思えるのだ。

「Who's Next」をもう一度聴いてみようと思ったのは、数年前のことだ。
『The Kids Are Alright』がDVD化され、「Who's Next」の代表曲「Baba O'Riley」と「無法の世界 (Won't Get Fooled Again)」のライブを見たからだった。
「Baba O'Riley」も「無法の世界 (Won't Get Fooled Again)」も知っていたが、こんな風に演奏されるとは思ってもみなかったのだ。
The Whoはライブパフォーマンスが評価されることが多いせいか、ライブで聴いた曲をレコードで聞くとちょっと印象が違って聞こえることがある。
普通はレコードの曲を聞いてライブでこう表現されるのだなと思うことが多いのだが、The Whoに関してはライブ映像を見てレコードを聴くことが多いのだ。
「Baba O'Riley」と「無法の世界 (Won't Get Fooled Again)」も、「Who's Next」で聴くほうがもっさりして聞こえる。30年前に私が感じたあの感覚だ。
ライブの70年代臭さはカッイイのに、レコードにだけ感じる70年代のチープな感覚。
この差はなんなのだろう。
これは映画よりもオリジナルアルバムを後に聞いた「Tommy」のときにも感じたものだが、「Tommy」はまだ映像的な印象が深い分受け入れられるのだろうか。 ただ70年代に対する80年代的な偏見が薄れている今聞くと、レコードの70年代的なチープさも、これはこれでいいと思ってしまう。

そしてもう一つ気づいたこと。
同じ年代に作られた二つのアルバムだが、「四重人格 (Quadrophenia)」はリアル十代であるのに対し、「Who's Next」はちょっと大人の目線から見た十代なのだ。
「Baba O'Riley」の歌詞にある

Don't cry
Don't raise your eye
It's only teenage wasteland

すでに十代を終えた人間の目から見た十代。
「Who's Next」の大人目線があるからこそ、「四重人格 (Quadrophenia)」の疾走があるのだということ。
十代の「四重人格 (Quadrophenia)」どっぷりのときには判らなかったことが、30年経ってやっと理解できるような、長い謎がひょんなことで解き明かされる感じ。
「Who's Next」を聴きなおしたことで、Pete Townshendの楽曲に対するテーマの連続性を、改めて知る事ができたのは収穫だったと思える。
そして、70年代に対する偏見のない今、十代を疾うに終えた今改めて「Who's Next」をしばらくじっくり聴きなおしたいと思うのであった。

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