当時、私よりも早く大学進学のために上京した友人が、「ウェンディーズのハンバーガーがうまい」と話していて、帯広にはないそのお店にちょっとしたあこがれを持っていた。
友人が言うには、ハンバーガーメニューから嫌いなものを抜いて注文できたり(ピクルスが嫌いだとか、ケチャップがいやだとかいう場合には、それらを抜いて作ってくれる)、じゃがいもを丸ごとオーブンで焼いたもの(ベイクドポテト)とか、アメリカ風に豆を煮たもの(チリ)だとかが、メニューにあるとの話。
しかも、当時は380円(350円だったかも。記憶不確か)で盛り放題(1回限定)のサラダバーがあった。
それらを、カウンターの店員さんがインカムでキッチンのスタッフに伝えるのがすごくかっこよく、当時のお笑いのネタにもなっていた。
また、丸いバンズに四角いパティも、パンから飛び出た角がなんとなくお得な気分にさせてくれた。
上京して、御茶ノ水にあった学校の近くにウェンディーズがあったので、サラダバーに一回でどれくらい野菜を盛り付けられるかをよく友達と競争したりした。
当時のハンバーガーは、てりやきだのグラタンだのとメニューの種類が今ほど豊富ではなかった。せいぜい、フィッシュかチキンかビーフかの違いで、ソースはケチャップ、マヨネーズが主流だった。
安さではマクドナルドやロッテリアにはかなわなかったが、味が画一的なマクドナルドなどと比べると、巨大なベイクドポテトに、チリを乗せようかチーズ を乗せようか迷い、サラダバーとベイクドポテトのどちらにしようか迷い、今日はチリを食べようかなどと迷い、今日はピクルスぬきにしようかとか、チーズをダブルにしようかなど、あれこれ“メニュー”で迷うことができたの が、ファーストフード店ではウェンディーズだった。
もちろんファーストフード店でそんなことをいちいち考えるのはわずらわしいのだが、そんなことすらおしゃれに感じる時代もあったことも事実なのだ。
(その後、オリジナルメニューに手を加えるということ自体、する人もいなくなった。現在では、たいていのハンバーガー店で可能であれば嫌いなものを抜いたりは頼めばしてくれるようになり、そんなことも特別なことでなくなった。)
お店が首都圏や近畿圏に集中しており、CMもなく地方にはあまり進出していなかったので、ネームバリュー的にはいまいちだった。会社がダイエーから離れ、牛丼のすき やなどを展開するゼンショーに移ってからは、メニューからサラダバーが消え、ハンバーガーのメニューも他店と同様に「てりやき味」などさまざまなラインナップをそろ えるようになり、ベイクドポテトやチリは健在なれど、なんとなく当時の魅力がなくなりつつあるような気がしていた。
そのうち、私の活動範囲にはお店を見なくなるにつれて、ウェンディーズに何年も足を運ぶことがなくなってしまっていた。
現在は化学調味料を憎む私だが、ファーストフードはたまに食べたくなるので足を運ぶこともあるのだが、昔からするとその絶対量は格段に減っているので、なかなかウェンディーズに行くことができなかった。
それでも、日本のハンバーガーチェーンの中では、一番好きだといってもいいくらい好きなお店なのだ。
12月11日のニュースに、「日本ウェンディーズ日本から徹底」のニュースを目にした。
ああ、またひとつ私の好きなものが消えてしまう。あのベイクドポテトもチリも、デイリー・クイーンのソフトクリーム同様、もう二度と食べられないのだ。
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