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暗闇に浮かぶ白い地下の看板イメージ。こんな感じでなかったかなあ。
帯広の駅がまだ北側の方がにぎやかで、大通りと西五条に弧線橋があった頃。
駅から線路沿いに大通りの弧線橋下に向かう道の途中に、こつぜんとモジリアニの「黒いネクタイの娘」の看板がある店があった。
あのあたりは他に店もなく、閑散とした通りだったので、暗闇にいきなりモジリアニ独特の黒目の女性の決して明るくない絵があると、非常にびっくりした。
店の入口を覗いてみると、階段だけが地下に伸び、階下に赤い電球が不気味にともっている
階段を下りた先がトイレで、赤い電球はその電灯なのだ。
トイレを中心に左右に分かれて、店が向かい合っていた、その左手が「白い地下」だった。
1985年当時、白い地下の向いは「狸穴」という名前の店だったが、その入口は木材で閉じられていた。
そこの店主が店で首吊り自殺をして、そのまま閉鎖されているという噂があったが、真偽は定かではない。
「ロシアパプ」と銘打った白い地下は、お通しに湿気った「かっぱえびせん」が出てくる。
店主のOさんは「うっと」というため息とも独り言ともつかない声と共に、テーブルにかっぱえびせんの入った容器を置いていく。
メニューはカクテルを中心に、“ウオトカ”などが数種置かれている。
ここのビーフストロガノフは意外においしかった。
薄暗い店内は湿気ったかびのにおいがちょっとしており、天井や壁には、ところ狭しと古い映画のポスターが貼られている。
看板の「黒いネクタイの娘」とロシアとはまったく無関係らしく、店主の趣味らしい。
劇団白樺のメンバーと通ううちに、店主のOさんとも懇意になり、映画が好きで自主制作映画も撮っていた人らしい。
劇団白樺のメンバーがちりぢりになり行かなくなってしまったが、私も帯広を離れてから一度だけ帰省した折に行ってみた。
でも、Oさんは私たちのことは覚えていない様子だった。
帯広駅前の再開発で、いつのまにかなくなってしまったようだが、今でもあの少しかびくさい匂いが懐かしく思う。
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