◇小さな一人旅
2009-11-20


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寒い時期は観光客もこないし、余計なのだろう。
市場の中に叔母の親戚がやっているお店があり、そこでほっけや筋子などを購入して自宅に郵送してもらった。

汽車の時間が近づいたので、16時17分発の特急おおぞら12号に乗るため、駅で乗車券を購入する。自由席か指定席か聞かれたが、自由席に。
しかし自由席はほぼ満席で、ぎりぎり席に着くことができた。車内アナウンスでは指定席は満席であるとのことで、利用者の多さにちょっと驚く。
駅のホームで、寒い中叔母が時間までずっと見送ってくれた。昔と違って窓が開くわけではないし、席を離れると取られてしまうので、話すこともできずそこを動くことができなかったのが心残りだった。

特急おおぞらは根室本線から石勝線に続く路線である。
特急だと釧路から帯広まで約1時間半で着く道のりが、鈍行だと3時間以上かかる。昔は、釧路の叔母の家に行くときに必ず汽車に乗ったのだが、3時間以上かかっていたような記憶がある。

目をこらして暗い窓の外を見るのだが、車内の電気が明るすぎて外が見えない。延々と続く冷たい闇の中、ときたま街や車の明かりが見えるが、ほとんど何も見えない。
窓に顔をつけてやっと見えた景色は、線路際ぎりぎりに波が打ち寄せる暗い海であった。 そういえば、昔こんなに線路ぎりぎりに海があって、汽車が海の中に入ってしまわないのだろうかと思った記憶がある。
白糠に近づくにつれ海は線路から遠ざかり、池田に入る頃にはすっかり内陸の何も見えない暗い景色に変わっていくが、釧路を出てからしばらく海が続く景色が昔はとても好きだった。
暗い海が続く景色の中で、ときおり停車しない駅前の風景に人の気配を感じるが、そのどれもがモノクロームの冷たい世界で、つげ義春の旅日記を思い出し、一人でいることがものすごく寂しいような、清清しいような気分になってくる。
今度来るときも一人なのか、あるいは旦那と二人なのかはわからないが、次は明るい時間に汽車に乗ろうと思う。

帯広駅に着き、父が駅まで迎えにきて私の一人旅は終了した。ここからは帰省旅である。
行く前に、旦那は「カメラを持っていっていいよ」と言ってくれたのだが、一人でカメラを持ち歩くことがなんとなくためらわれて、カメラを持っていかなかった。
だが、これは後で後悔に変わった。
うまく写らなくてもいいから、あの線路際に続く暗い海の写真を撮っておけばよかったと思った。

今回は、帯広に着いてからも仏さん参りやお見舞いで、友達に会う時間がとれなかった。
唯一、帯広百年記念館と美術館で開催されていた、ロシアの博物館にあったアイヌの資料を展示した大掛かりなイベントを、半日かけてゆっくり見ることができたのが収穫だった。
もう少しゆっくり時間をとろうと思えばとれたのだが、体調も芳しくなく、実際帯広にいる間謎の湿疹に悩まされ(これは、ヒートテック素材の下着が原因か? できるならカニでないように)、こちらに戻ってからも大変だったので、この期間が限界だった。
それに帯広の友人は喫煙者が多いので、実際今の私の体調では5分と一緒にいられないだろう。
友人には会いたいが、今はタバコの臭いだけで気持ちが悪くなってしまうので、タバコが平気になった頃にまた連絡できたらいいと思う。

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